福田ゆみ:みなさんこんにちは。福田ゆみです。
10月になり、食欲の秋・芸術の秋、という気分です。
それでは今月も隅田先生、税務会計講座をよろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
先月から、「交際費課税」についてお話ししていますが、今月は「交際費等になるもの、ならないもの」をテーマにお話しします。
そもそも税法の言う交際費等に該当しなければ、交際費課税もありませんからね。


福田ゆみ:それは、どういうことでしょうか?

隅田:会社は日々の費用を会計処理するときに、その費用の性質に応じた会計科目に分類して処理します。例えば、「福利厚生費」「会議費」「販売促進費」などです。「交際費」もこの中にあります。
ところが、このように「福利厚生費」「会議費」「販売促進費」などに処理した費用の中に、税法の言う「交際費等」が含まれていることがあるのです。
法律の定義は「交際費等」を非常に広く捉えていて、世間一般の感覚とズレがあるためにこのようなことが起きてしまいます。


福田ゆみ:そんなにズレがあるのですか?

隅田:では改めて交際費等の定義ですが、前回お話したとおり、法律で、
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他の事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」
と定義しています。
この説明の中にすでに、世間一般の感覚とのズレがあることに気づきませんか?


福田ゆみ“その他の事業に関係のある者等”でしょうか。

隅田:その通りです。
この表現は、直接会社の営む事業に取引関係のある者だけでなく、間接に会社の利害に関係ある者、及び役員、従業員、株主等を含んでいます。
例えば、特に営業成績の優秀な従業員がいたとします。ご褒美に通常のボーナスを支給するだけではとても済まないので、一緒に食事をして労をねぎらったとします。
世間一般の感覚では、この慰労会費は「福利厚生費」ですが、さて税務上はどうでしょうか?
労をねぎらった = 慰安 というのもポイントです。


福田ゆみ:ということは、慰労会費は「交際費等」なのですか?

隅田:結論を言うとそうです。
まずは問題提起として、交際費以外の科目で会計処理しても、「交際費等」に該当し、「交際費課税」を受ける、ということが分かっていただけたと思います。


福田ゆみ:そんな。何か判断基準がないと、とても困ります。

隅田:そのような経理の現場の声がありますので、法律や通達、その他いろいろな文書に判断基準が書いています。

福田ゆみ:すると経理の現場は、まずは自分の判断基準で「福利厚生費」などの科目に処理をして、それから税務申告のときに直すのですか?

隅田:それは面倒ですから、「交際費等」になるものは会計処理をするところで「交際費」の科目を、反対に「交際費等」にならないものは別の科目を使っても問題ありません。
ですからここからは便宜上、「交際費」という科目で処理、ほかの科目で処理、とお話ししていきます。


福田ゆみ:はい、分かりました。

隅田:さて、判断基準は実はたくさんあり、それら全てを取り上げることはさすがにできないので、飲食費について集中的に取り上げていきます。
と言いますのも、非常に細かく規定されていて、3つのステップがあります。


福田ゆみ:どのようなステップですか?

隅田:まず“社内飲食費”というものがあります。
「専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費」のことです。場所ではなく、参加者が社内の人間、という意味の“社内”です。1人でも社外の人がいれば“社内飲食費”ではありません。
これは「交際費」になります。


福田ゆみ:だから、最初の慰労会費は「交際費」なのですね。
でも、これは立派な福利厚生活動ですよね。


隅田:ポイントは、参加対象が社内の全員か一部か、です。本来福利厚生活動というものは社内全員が対象なのですから。
法律でも「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」は「福利厚生費」でOKとしています。
したがって、忘年会・新年会のようなものは、「福利厚生費」で問題ありません。


福田ゆみ:参加対象がポイントだということがよく分かりました。

隅田:では、社外の人との飲食費はどうかといいますと、2つ目のステップ“会議に関連した飲食費”かどうか、という基準での判断があります。
「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」は、法律で「会議費」の処理がOKになっています。
取引先に来てもらって会議を開いたり、株主に来てもらって株主総会を開いたりするのに、何も出さないわけにはいきませんよね。
また、「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用」は、通達で「会議費」の処理がOKになっています。


福田ゆみ:「通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等」という表現がポイントですか?

隅田:はい。これを超えたら「交際費」です。
しかしもう1つ、「通常会議を行う場所」という表現、つまり“どこで会議を開くか“も重要なポイントです。
会議のために外部の会議室を借りることもあるでしょう。借りれば使用料を払うことになり、高額なこともあるでしょう。それでも、その会議室が「通常会議を行う場所」であればOKだということです。
とはいえ、なぜそのような高額な使用料の会議室を借りたのか、合理的な説明が必要になります。


福田ゆみ:高額な使用料の会議費と聞いただけで、接待が目的としか考えられないですよね。合理的な説明も何もないと思いますが。

隅田:では、会議ではなく単なる飲食費ということであれば、3つ目のステップ“5000円基準”としてよく知られている基準で分類することになります。
「1人当たり5000円以下の飲食費」のことなのですが、これは平成18年度に導入されました。


福田ゆみ:私も聞いたことがありますが、意外と最近なのですね。

隅田:これは、次の事項を記録し、その結果として1人当たりの飲食費が5000円以下と分かれば、議事録はありませんが「会議費」などで処理してよい、というものです。
イ 飲食その他これに類する行為のあった年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ その飲食等に参加した者の数
ニ 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地(例外あり)
ホ その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項


福田ゆみ:すると、記録していないと・・・。

隅田:はい、「交際費」で処理してください。

福田ゆみ:そういえば、前回お話しのあった「接待飲食費」で記録する事項とほとんど同じですね。
飲食費という点でも共通していますし・・・。


隅田:確かに似ていますね。せっかくですので、接待飲食費をもう一度説明します。
「飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その旨につき帳簿書類に次のことが記載されているもの」
イ 飲食その他これに類する行為のあった年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地(例外あり)
ニ その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
これが接待飲食費です。


福田ゆみ:参加者数の記録が必要になっているのですね。

隅田:はい。参加者数が分からなければ1人当たり飲食費が計算できませんからね。
なお、得意先や仕入先の氏名を必ずしも漏れなく記録しなければならないわけではありません。参加者数が多ければ、“どこそこの誰それ、ほか〇人”という記録でもOKです。
このような記録した結果、1人当たりが5000円以下であれば「会議費」です。
しかし5000円超であれば、交際費課税を受けますが、「接待飲食費」の規定により損金算入が認められる場合があります。「接待飲食費」という科目は一般的ではありませんが、そのように処理しましょう。
そして、そもそも記録がなければ交際費課税を受けますので、「交際費」で処理してください。


福田ゆみ:うっかり記録を忘れたら「交際費」になるのは、厳しいですね。皆さん、ちゃんと記録を残しましょう。笑。
そして、前回も気になっていたのですが、イの「これに類する行為」とは何でしょうか?


隅田:例えば、得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」などで、得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提としています。

福田ゆみ:飲食店内での飲食だけではなく、差入れ弁当でもいい、ということだったのですね。
飲食費だけでもこんなに細かいなんて。順を追って説明していただいて、よく分かりました。


隅田:では、今回の税務会計講座を終わります。

福田ゆみ:先生、どうもありがとうございました。

Point
1.事業と関係のある者(従業員等を含む)との接待交際費用は「交際費課税」となる可能性がある。
2.会議を行う場所によっては、提供する飲食の費用が「交際費」になる。
3.1人当たり飲食費が5000円以下になる飲食費を「会議費」と処理するためには記録を残すべし。