福田ゆみ:みなさんこんにちは。福田ゆみです。
今年も残すところあとひと月です。
税務会計講座、今月もよろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
今月から3か月にわたって贈与税についてお話しします。


福田ゆみ:贈与税も身近な税金ですよね。税率も結構高いと聞いています。

隅田:確かに高いです。
贈与の額が110万円の基礎控除額を超えると、もらい受けた人(受贈者)に対して贈与税がかかるようになります。
税率は超過累進税率になっています。贈与の額が増えるにつれて税率が高まるということですね。現在、10%から55%まであります。
具体的には、基礎控除額控除後の額つまり課税価格が200万円までは10%、200万円からは15%以上、というものです。


福田ゆみ:少ない額のうちから税率が上がっていくのですね。

隅田:そして、受贈者が20歳以上である場合、“誰からの贈与”かによって、300万円を超えた場合の税率が変わります。
親や祖父母、これを民法では「直系尊属」と言いますが、直系尊属からの贈与の場合、
 ・200万円から400万円までは15%
 ・400万円から600万円までは20%
 ・600万円から1,000万円までは30%
と上がっていきます。
直系尊属以外の者からの贈与の場合、あるいは受贈者が20歳未満の場合、
 ・200万円から300万円までは15%
 ・300万円から400万円までは20%
 ・400万円から600万円までは30%
 ・600万円から1,000万円までは40%
と上がっていきます。
詳しくは速算表をご覧ください。


福田ゆみ:300万円を超える額の贈与になれば、同じ額でも、身内からの贈与だと税率が低く抑えられているのですね。

隅田:このように高い税率が設定されている主な理由は、贈与が相続税回避の手段に利用される場合があるからです。

福田ゆみ:それは、相続税の対象になる財産を、贈与で減らすということですか。

隅田:まさにその通りです。
相続による財産の分散と、贈与による財産の分散は、行う時期が違うだけで結果は同じですよね。
しかも、贈与をすれば相続財産は減りますから、かかるはずの相続税もかからなくできるかもしれません。


福田ゆみ:税金はなるべく払わずにすませたいですものね。

隅田:しかし、無制限に贈与を認めては、相続税がないがしろになります。そこで贈与税を設けている、税率も高く設定し、多額の贈与に歯止めをかけている、ということです。
もっとも、少額の贈与にまで課税するのも問題ですので、110万円の基礎控除額を設け、110万円以下であれば無税で贈与できるようになっています。


福田ゆみ:ここで言う贈与の額は、いつからいつまでのものですか?

隅田:これは1年間、つまり、1月1日から12月31日までの間の贈与額の合計です。
しかも、贈与税は受贈者に対する税金ですから、複数の人からもらい受けたならば、もらい受けた合計が対象です。


福田ゆみ:ということは、もし3人の人から110万円ずつもらったら、330万円になるのですか?

隅田:そういうことになりますから、注意が必要です。
なお、贈与税は『相続税法』の中で定めています。法人税には『法人税法』、所得税には『所得税法』、消費税には『消費税法』という法律があるのに対し、贈与税には“贈与税法”という法律がありません。


福田ゆみ:それにしても私たち、ついつい“無税だから”“申告が面倒だから”という理由で、1年に110万円までしか贈与しないですよね。
でも、お話を聞いていると、贈与税を払ってでもまとまった額を贈与したほうが得になるケースもあるように思えてきました。


隅田:まさにそうなのです。
税理士が相続税対策のご相談を受けてアドバイスする場合、現時点の資産の状況を把握したのち、2つの観点でアドバイスします。
1.推定相続財産の額をほぼ減らすことなく、相続税額や相続税課税価格を減らす
2.生前贈与により総資産額を減らす


福田ゆみ:1つ目は、そういう方法があるのですか?

隅田:これは資産運用のケースです。一つ一つ詳しくお話しすると長くなるのでできないのですが、生命保険の加入や、賃貸アパート事業まで幅広くご提案します。

福田ゆみ:そして2つ目が生前贈与の方法ですね。

隅田:これは、例を挙げたほうが分かりやすいと思います。
総資産が3億円前後あり、推定相続人が配偶者1人・こども2人のケースを考えます。便宜上、配偶者の税額軽減は無視します。
相続税講座2回目の復習ですが、日本の相続税額は、相続人が課税価格を法定相続分で取得したと仮定して先に税額を計算します。
すると適用する税率は、配偶者に対しては40%、こどもに対しては30%。これは、総資産が1000万円増減すると、税額が350万円増減するという意味です。
この1000万円をもし、5年かけて200万円ずつ、一方のこどもに贈与していくと、贈与税額は、
( 200万円 − 110万円 ) × 10% × 5年 = 45万円


福田ゆみ:相続税にすると350万円にもなる財産1,000万円を、わずか45万円の贈与税で贈与できるのですね。

隅田:このような生前贈与を、人数をさらに増やして行えば、税額の減少も加速します。
そして贈与税には、非課税の特例制度もいくつかありますので、そういうものをご提案することもあります。詳しくは次回お話しする予定です。


福田ゆみ:そういえば、相続が起こった場合は、3年以内に相続人に贈与した財産は相続財産に足して相続税を計算するのでしたよね。このような生前贈与財産の額も足すのですか?

隅田:相続税にある、「3年以内の贈与財産の加算」のことですね。
残念ながら、入ってしまいます。
“相続税の税率で払う”という意味のない結果とならないよう、実際は“元気なうちの贈与”や、“推定相続人以外の親族への贈与”をアドバイスしています。


福田ゆみ:せっかくお話ししていただいているのにすみませんが、贈与税は申告しないといけないのですか?
贈与税は、どちらかというとマイナーな税金ですよね。申告しなくても、すぐに税務署から催促が来るとは思えないです。
申告しないといっても、わざと申告しないこともあるでしょうが、申告しなければならないことを知らなかったということもけっこうあると思うのです。
そのうえ、申告すると税金を払う、申告しなければ払わずに済む。
そう考えると、“正直者がバカを見る”みたいで・・・。


隅田:確かに、税務署は日本全国の贈与のすべてに目を光らせているわけではありませんから、贈与の翌年に申告しなくても直ちに催促が来るのは考えにくいです。
しかし、贈与税を含め税金は7年経たなければ時効になりません。6年前の贈与であってもそれに税務署が気づけば、ペナルティと合わせて税金を払わなければなりません。


福田ゆみ:6年後に税務署が気づく・・・。何かきっかけがあるのですか?

隅田:一番多いきっかけは相続です。
役所に死亡届が出れば、その情報は税務署に行きますので、これで税務署は察知します。
その後、相続税の申告があった場合は申告漏れの財産がないか、あるべき申告が無申告ならばないなりに、金融機関などに照会をかけて調べます。その流れで生前贈与を調べるのです。


福田ゆみ:すると、生前贈与から7年の間にそのようなきっかけもなかったら・・・。

隅田:はい、時効です。
実際に私たちも、相続のお話をいただいて初めて、10年以上前の無申告の生前贈与の話をお聞きすることもあります。


福田ゆみ:すると、申告するのがますますバカらしく思えてきます。笑。

隅田:私は立場上、「申告してください」と言わなければなりませんが・・・。
ペナルティの1つに「無申告加算税」というのがあります。贈与税に限ったペナルティではありませんが、原則は本税の額の15%で、ただし税額が50万円を超えると、その部分については20%になります。
無申告加算税を追加で払うリスクも是非考えていただきたいです。


福田ゆみ:20%のペナルティは大きいですね。皆さん、申告しましょう。笑。

隅田:では、贈与税の1回目の講座を終わります。

福田ゆみ:先生、どうもありがとうございました。

Point
1.贈与税率は超過累進税率、少額のうちから税率は上がっていく。
2.生前贈与を活用することで相続税対策に。
3.無申告でいると、無申告加算税は本税の15%(50万円を超える部分には20%)だが、7年で時効。