福田ゆみ:あけましておめでとうございます。福田ゆみです。
本年も、税務会計講座を通じて、皆さんと縁を結んでいきたいと思います。
それでは新年1回目、隅田先生よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
前年の12月から、贈与税がテーマでしたね。
今回は、贈与税が非課税になる主なケースをお話しします。


福田ゆみ:なるべく税金がかからないように贈与したいですものね。
どのようなケースには非課税になるのでしょうか?


隅田:これには大きく2つに分けられます。本質からして贈与税を課すべきでないもの、そして、特例で非課税になっているものです。

福田ゆみ:本質からして贈与税を課すべきでないもの、とはどういうものですか?

隅田:条文でお答えします。
相続税法第21条の3に、「贈与税の課税価格に算入しない」ものが挙がっています。すべてを説明すると長くなりますので、大事なものを2つお話しします。
@「法人からの贈与により取得した財産」
A「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」


福田ゆみ:1番目の、法人からの贈与というのは・・・?

隅田:法人からの贈与により取得した財産は、所得税がかかることになっています。
一般人にとっては間違えやすいところですので注意してください。


福田ゆみ:では2番目の、扶養義務者相互間というのが・・・?

隅田:はい。本質からして贈与税を課すべきでないものです。
「扶養義務者相互間」というのは、扶養義務者と被扶養者との間ということです。前者は例えば親、後者は例えば子ども、つまりこの条文は「仕送り」を想定しています。
経済学的な考えになるのですが、贈与財産を大きく、「生活費及び教育費に充てるもの」と「それ以外」に分けたときに、「生活費及び教育費に充てるもの」は、もらい受けた人はその瞬間に使い切ってしまう、つまり「費消」するものと考えられます。反対に「それ以外」というのは、もらい受けた人は財を形成する、つまり「投資」と考えられます。
このことを踏まえると、贈与税は相続税の課税回避を防止する役割を担っている点で、「投資」になる財産の贈与を課税するのはなるほどですが、「費消」する財の贈与まで課税するのは、本質的におかしいと分かっていただけるでしょう。


福田ゆみ:先生お得意の、経済学的な考えですね。よく分かります。
そしてこの条文には、「通常必要と認められるもの」という表現もあるのですね。


隅田:これは、「不必要なほどの贈与」だけでなく「一括の仕送り」にも贈与税がかかることを意味しています。
例えば、子どもの大学生活4年分の学費や生活費を初年度にまとめて仕送りしても、すぐに費消しない大部分には贈与税がかかる、ということです。
このような財産は預金残高にはっきり現れますので、特に注意が必要です。


福田ゆみ:こまめに仕送りしなければ贈与税がかかってしまうのですね。

隅田:そして、通達に挙っている非課税の贈与もあります。
「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。」


福田ゆみ:年末年始の贈答ということは、お年玉は非課税なのですね。少し安心しました。

隅田:では次に、特例で非課税になっているものをお話しします。
有名なものが4つあり、1つ目が「贈与税の配偶者控除」というものです。
@婚姻期間が20年以上である配偶者から、A居住用不動産又はその取得資金を取得した場合、最大2000万円の控除があります。
これは、基礎控除110万円とは別に存在します。
なお、居住用不動産にはいろいろな条件があります。


福田ゆみ:配偶者控除ですね。覚えておきます。笑。

隅田:2つ目は、現在の法律では、平成33年12月31日までの贈与が対象となっていますが、今後延長されると思われます。
それが、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。
@20歳以上の者(所得制限あり)が、Aその直系尊属(親や祖父母)から、B住宅取得等資金を取得し、翌年3月15日までに新築等を行うなどの要件を満たせば、C贈与税期限内申告書に非課税の適用の旨を記載すること等を条件に、一定の額まで非課税になります。


福田ゆみ:期限までに家を建てたり、期限内に申告する必要があったり、いろいろ条件があるのですね。

隅田:3つ目と4つ目は、現在の法律ではどちらも、平成31年3月31日までの贈与が対象となっていますが、今後、受贈者に所得制限が加わって延長される見込みです。
その3つ目というのは、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。
@30歳未満の者が、Aその直系尊属(親や祖父母)から、B教育資金に充てるため、C銀行等と契約を結んで預入れ等をした場合、1500万円までは贈与税が非課税となります。
ただし、30歳の時点で残額があれば贈与税がかかります。
なお、教育資金には範囲があります。
4つ目は、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。
@20歳以上50歳未満の者が、Aその直系尊属(親や祖父母)から、B結婚・子育て資金に充てるため、C銀行等と契約を結んで預入れ等をした場合、1000万円までは贈与税が非課税となります。
ただし、50歳の時点で残額があれば贈与税がかかります。
この結婚・子育て資金にも範囲があります。


福田ゆみ:銀行と契約・・・。手続きがあるのですね。

隅田:その代わり、この非課税制度は契約初年に銀行が代わりに税務署に届出てくれますよ。

福田ゆみ:ところで、銀行等に預入れ等をしているということは、本人の手元にないということですよね。

隅田:そうです。いったん本人が立て替えて、銀行等に領収書等を持っていきます。そして銀行等が教育資金や結婚・子育て資金の範囲内かどうかチェックをします。その後に払い出し、つまり精算するという流れです。

福田ゆみ:チェックが入るのですか?必要なのは分かりますが、あまり見られてうれしくないですね。

隅田:そうですよね。
しかも従来から、条文で教育費の贈与は非課税になっていて、通達で祝金に似た結婚資金の贈与も非課税になっています。このような贈与は基本的に誰からのチェックも入りません。そもそも領収書がないのですが。


福田ゆみ:先生、もう少し詳しく、比較で説明していただけますか?

隅田:一度に贈与できる額の違いを言うと、一括贈与の非課税ならば1500万円または1000万円までできます。従来の非課税贈与では比較的少額ですから、それに比べればメリットを感じられるでしょう。
しかし、銀行等との契約手続が一括贈与の非課税には必要ですから、面倒に感じられると思います。
さらに、銀行等の他者のチェックが一括贈与の非課税にはありますから、やりづらさを感じられるかもしれません。
そのうえで相続税対策としてアドバイスするにあたり、どうしても想定はお金持ちのご高齢になるわけですが、対策を急がれる場合には、いろいろと面倒ですが一括贈与をお勧めします。


福田ゆみ:やはり、一括贈与できるというのが最大のメリットですね。

隅田:さて、今回の講座の最後にもう1つ、贈与税のかからないケースをお話しします。それは、そもそも贈与という契約が成立していないケースです。

福田ゆみ:えっ。どういう意味ですか?

隅田:これはつまり、名義だけは他人になっているケースです。
実質として他人の所有になっていなければ贈与したことになりませんから、贈与税はかかりませんが、相続が発生すれば相続財産に加算され、相続税となって降りかかります。
このような財産は一般に「名義財産」と呼びます。


福田ゆみ:例えば奥さんや子どもの名義の預金ですね。私も聞いたことがあります。「名義財産」と呼ぶのですね。
でもそれは、よほどの何かができていないということですよね。


隅田:一番のポイントは、“もらい受ける意思があれば当然になされることがなされているかどうか”です。
口座開設に必要な銀行印は、本人のハンコを使うでしょう。さらに、その後の資金管理は自ら行うはずです。
逆に言えば、内緒で開設・内緒で積立て、というのは絶対あってはいけません。


福田ゆみ:なるほど。本人が管理する、当然といえば当然ですね。なのにそれができていないことが、けっこうあるような気がします。

隅田:実は「へそくり」も注意が必要です。
たいていは奥さんが、夫の収入をもとに家計をやりくりして作ります。奥さんが努力して築いたものですから、奥さんの所有物と思っているでしょう。
しかし夫の収入が源ですから、法律上は夫の財産になります。
背景にあるのが、夫婦はだいたい財布が一つだということです。
共働きで互いに収入があるなど財布が別々にあり、夫婦間のお金のやり取りもきっちり贈与として扱っていれば、問題ありません。


福田ゆみ:そういえば、贈与というのは法律に決まりがあるのですか?

隅田:はい、民法の549条にあります。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
つまり、お互いに「与えましょう」「頂きます」という意思があり、財産権が相手方に移転する契約が贈与です。
このポイントを抑えて、間違いなく贈与を実行してもらいたいです。


福田ゆみ:本当にそうですね。皆さんも気をつけましょう。

隅田:では、贈与税2回目の講座はこれで終わりにします。

福田ゆみ:先生、どうもありがとうございました。

Point
1.生活費や教育費の贈与は、必要範囲内のものは非課税。香典等も社会通念上相当な額であれば非課税。
2.贈与税が特例で非課税になるものに、@配偶者控除、A住宅取得等資金、B教育資金、C結婚子育て資金がある。
3.贈与の要件を満たさない他人名義の財産(名義財産)は相続財産に加算される。