福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
先月に引き続き、隅田先生に複式簿記について教えてもらいます。
先生、よろしくお願いします。


隅田:ゆみさん、よろしくお願いします。
今回は、前回よりも科目が増えます。


福田ゆみ:増えるんですか! いや〜。(苦笑)

隅田:大丈夫ですよ、慣れますから。それに、商売して会計記帳すると、ふつうにこれくらいの科目を使用しますからね。
では、前回の続きです。商売を始めて1か月が経ち、貸借対照表はこうなりました。


現 金 70万円買 掛 金  40万円
売掛金 60万円未 払 金  10万円
商 品 70万円借 入 金  20万円
資 本 金  100万円
利益剰余金  30万円

隅田:借方に「売掛金」、貸方には「買掛金」・「未払金」・「利益剰余金」が新たに増えました。
1つ1つ、意味を説明していきます。説明の都合、利益剰余金から行きますね。


福田ゆみ:はい、お願いします。

隅田:これは、商売を開始して、トータルでどれだけ儲けたかを表しています。
ですからこの人は、1か月で30万円稼いだということになります。


福田ゆみ:そうなんですね。

隅田:・・・何も疑問はないですか?

福田ゆみ:え、疑問ですか?

隅田:ほら、先月、現金は60万円からスタートしているでしょ。10万円しか増えてないのに、こちら(利益剰余金)は30万円となってます。

福田ゆみ:そう言われると、そうですね。

隅田:このからくりを説明しましょう。

隅田:話は変わりますが、ふつう私たち、買い物したら、その場で現金で買いますよね。

福田ゆみ:はい。

隅田:店の立場で言えば、その場で売る、ということです。といってもこれは、小売(こうり)の場合です。
業者に毎日のようにモノを売る、卸売(おろしうり)の場合、その場で現金で、というのはとっても効率が悪く、後日まとめて代金をもらうのがふつうです。


福田ゆみ:後日まとめて・・・。



隅田:しかし、毎日モノを売っているのも事実です。営業成績を正しく知るためには、その事実に基づいて記録するほうがずっと優れています。

福田ゆみ:言われてみれば、そうですね。でも、どうすれば・・・?


隅田:先ほどの「売掛金」を使うんです。

福田ゆみ:それが売掛金!

隅田:はい。売掛金というのは、後日まとめて受け取れる販売代金のことを言います。

福田ゆみ:じゃあ、買掛金はその逆ですか?


隅田:さすがゆみさん、その通りです。

福田ゆみ:さすがーるですから。

隅田:正確には、商品などの仕入代金を後日まとめて払う場合に「買掛金」を使います。

福田ゆみ:そして、未払金も、まだ払ってない、後で払う、ということですね。んー、スッキリー。


隅田:・・・と、このような理由で、利益剰余金はあくまで計算上の金額であって、現金の増減とは違うのです。
そして、このような記録方法を、「発生主義」と言います。


福田ゆみ:発生主義?

隅田:現金の増減があってからでなく、売ったとか買ったとかという事実の発生した時に記録する方法です。
反対に、現金の増減を基準に記録するのは、現金主義と言います。


福田ゆみ:そのままですね。

隅田:はい、そのままです。
さて、お小遣い帳をつけたことのあるゆみさん。発生主義でお小遣い帳はつけられるでしょうか。


福田ゆみ:無理です。

隅田:そうです。お小遣い帳のような単式簿記では、発生主義の記録ができません。
これに対して、複式簿記の最大のメリットは、発生主義で記録できるところなのです。


福田ゆみ:そうなんですね。
あの、こないだの・・・。ゲーテがどうのこうの言ってるんですよね。


隅田:はい、「複式簿記が商人にあたえてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が産んだ最高の発明の一つだね。」のことですね
(『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』)。


福田ゆみ:それです。分かる気がします。

隅田:では最後に、もっと感動することをお話しましょう。3年後の貸借対照表を見てください。

現 金 900買 掛 金  100
売掛金 170未 払 金   20
商 品 150資 本 金  100
利益剰余金  1000

隅田:この貸借対照表には3年間の歴史が詰まっているんですよ。
3年かけて1000万円稼いだ、お金も900万円貯めた、という過去が分かります。


福田ゆみ:歴史、過去・・・、そういうことになりますね。

隅田:そして、これから回収できるお金が170万円あり、逆に、払わなければならないお金が100万円と20万円あることも分かります。
さらに、このあと最低でも150万円は現金になりそうですよ。


福田ゆみ:えっ?どうしてですか?

隅田:商品が150万円ありますよね。最低でも150万円で売れるでしょう。


福田ゆみ:あっ、これのことですか。


隅田:つまり、この会社の未来が分かる。
私たち、過去のどういう原因のために現在こうなのか、知りたいですよね。
原因に悪いところ・問題が分かれば、反省し、改めることができます。
反対に未来について、これからどうなるのか、どういう結果が現れるのか、不安ですよね。
悪い未来と分かれば先手が打てますから、安心できると思います。
企業も同じです。
この点、貸借対照表は、一見すればただの数字の羅列ですが、これ1枚で企業の過去も未来も両方分かる、ひいては、そういう記録方法が複式簿記なのです。
といったところで、複式簿記の説明を終わります。ゆみさん、お疲れ様でした。


福田ゆみ:パチパチパチパチ。隅田先生のおかげで、複式簿記がよく分かりました。ありがとうございました。

Point
1.発生主義とは、売った買ったの事実の発生の時に記録する方法。
2.複式簿記の最大のメリットは、複式簿記で記録できるところ。
3.貸借対照表で、企業の過去も未来も分かる。