福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
今年の夏は本当に暑いですね。皆さんは体調を崩されていないでしょうか。
税務会計講座、今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
相続税の講座の最後にお話ししたいのが、不動産の評価についてです。
相続税額は、相続財産の金銭的価値を評価して求めるわけですが、預貯金のように残高そのままでいい財産、株式のように評価しやすい財産がある一方で、不動産のように評価しにくい財産もあります。
もし納税者の意のままに評価することを許せば、公平な課税が行われなくなるのです。


福田ゆみ:すると、評価について何かしらの基準があるということですね。

隅田:その通りです。この基準を『財産評価基本通達』といいます。
法律ではないのですが、全国の税務署が統一的に対応するための指針を示したものですので、事実上納税者が守らなければならない基準となっています。
そして、この『財産評価基本通達』に基づく評価額を「相続税評価額」といいます。


福田ゆみ:そこにはどのように書いてあるのですか?

隅田:まず「財産の評価は時価による」と書いています。続いて、「時価とは、課税時期(相続や贈与により財産を取得した日)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」と書いています。

福田ゆみ:要するに、『財産評価基本通達』に従いなさい、ということですよね?


隅田:そういうことではありません。この文章には、“原則”と“例外”の両方を書いています。
つまり、原則は時価なのです。不動産ならば、実際にその不動産が直前直後に第三者と売買されたならばその価格が時価ですし、あるいは不動産鑑定士という職業の方に依頼して鑑定評価額を算出してもらえばその評価額が時価です。
しかし、ふつうは簡単に調べられませんので、例外として『財産評価基本通達』に従ってもよいことになっているのです。
ですから逆に言いますと、『財産評価基本通達』に従った評価額が時価とあまりにもかけ離れている場合、『財産評価基本通達』に従わず鑑定評価額で評価すれば、それは原則通りということになるのです。
ただし、税務署の本音は、なるべく『財産評価基本通達』に従って評価してほしいようです。


福田ゆみ:『財産評価基本通達』による評価額が、時価とかけ離れることがあるのでしょうか?

隅田:では、その点をもう少し深くお話ししましょう。宅地をメインにお話ししていきます。
まず、国税庁が全国の土地を、『財産評価基本通達』で定める2つの評価方式のどちらで評価するかという区分により、2種類に分けています。
1つ目が路線価地域。ここは路線価方式で評価することになります。
2つ目が倍率地域。ここは倍率方式で評価することになります。


福田ゆみ:この2つはどのように違うのですか?

隅田:路線価があるかないか、というだけの違いです。
路線価のある地域は決まって道路網の発達した市街地などです。しかし、市街地でも路線価のない地域はけっこうあり、路線価地域は日本の国土全体の4%もないようです。
ここで路線価というのは、路線に面する宅地の1u当たりの評価額のことで、国税局が路線価を定めた地域が路線価地域です。


福田ゆみ:すると、路線価方式の評価方式は・・・?

隅田:はい、路線価にその土地の面積を掛けて計算します。
しかし、土地の形状などにより取引価格が上下することもありますから、補正率というものを掛けて調整します。この補正率も『財産評価基本通達』にあります。


福田ゆみ:国税局が路線価を付ける時に、何かを基準にしているのでしょうか?

隅田:これは、毎年3月に公表される、公示価格を基準にしています。“その地点から何百mだけ駅に近いから少し上げよう”といった具合です。
ただし、この路線価は実際の公示価格の8割程度と言われています。


福田ゆみ:ということは、路線価はすでに時価の8割ぐらいに抑えられている、ということになりますよね。

隅田:そうなのです。
先に、鑑定評価額の時価のお話をしましたが、鑑定評価額もまた公示価格を参考にするとはいえ、8割に抑えるようなことはしません。ですから、この鑑定評価額が路線価の評価額とかけ離れるケースはなかなかありません。


福田ゆみ:もう1つの倍率方式は、どのような方法ですか?

隅田:倍率方式は、市町村の固定資産税評価額に倍率を掛けて計算します。

福田ゆみ:そう言われれば、市町村にも評価額がありますね。

隅田:そうなのですが、この評価額は固定資産税の課税が目的です。そしてこちらは公示価格の7割程度と言われています。

福田ゆみ:市町村は7割で評価しているのですか?

隅田:そうです。つまり、路線価が付くか付かないかで1割の差が生じてしまいます。これを調整するために、倍率を掛けるのです。
この倍率は、国税庁が、市町村ごとの『評価倍率表』というものに、1.1倍や1.2倍の倍率を示しています。


福田ゆみ:すると、路線価方式ではする補正を、倍率方式ではしないのですか?

隅田:いえいえ、固定資産税評価額はすでに補正した後ですよ。
実は、市町村の固定資産税評価額にも路線価があり、これを固定資産税路線価といいます。
公示価格の7割程度というのはこの固定資産税路線価のことです。
そして市町村には独自の補正の基準があり、固定資産税評価額は、固定資産税路線価に面積を掛け、さらに独自の補正率を掛けて求めているのです。


福田ゆみ:なるほど。路線価方式でも倍率方式でも、土地に評価額に差はそれほどないのですね。
では、建物はどのように評価するのですか?


隅田:不動産の世界では家屋と言いますが、こちらの時価も簡単に調べられないですよね。
そこで、ここでも市町村の固定資産税評価額を用いることにしています。
しかも、家屋の場合は等倍です。
ちなみに、家屋の固定資産税評価額は、新築でも購入価格の8割ぐらいに抑えられますから、一般的に時価よりも少し低く評価できます。
このように、不動産の相続税評価額は一般的に時価よりも低くなるようになっています。これは、相続税は金納が原則であるのに対し、不動産が換金性の低い財産である点を考慮していると言われています。


福田ゆみ:でも、いくら考慮しているとはいえ、これからも住み続ける土地建物の評価によって相続税を払うことになれば、場合によってはその土地建物を売らなければならないですよね。鑑定評価しても下がりそうにないですし・・・。

隅田:ゆみさんの言うことももっともです。
そこで、一定の要件を満たした土地にはさらに特例が受けられ、これを「小規模宅地等の特例」と言います。この特例は、持っている宅地等が、
・特定事業用宅地等
・特定同族会社事業用宅地等
・特定居住用宅地等
・貸付事業用宅地等
のどれかに該当すれば、相続税評価額からさらに一定の割合を減額したものを課税価格にすることができる、というものです。


福田ゆみ:「宅地」ではなく「宅地等」とあるのは、なぜですか?

隅田:「等」には「借地権」を含めているからです。
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権のことで、自己または親族名義の建物の敷地が第三者名義である場合、「借地権」という無形財産を認識・評価することになり、相続があれば「借地権」も相続財産となるのです。


福田ゆみ:では、私が例に挙げた土地は「特定居住用宅地」に該当するのでしょうか?

隅田:「特定居住用宅地」に該当するパターンはいろいろあり、その全てのパターンを今回お話しすることができません。
ただ、被相続人の居住の用に供されていた宅地については、被相続人と同居していた親族がその宅地を取得する場合は、相続開始の時から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し(居住要件)、かつその宅地を相続税の申告期限まで有していれば(所有要件)、「特定居住用宅地」に該当するため、この特例が受けられます。
宅地を取得するのが被相続人の配偶者であれば、居住要件も所有要件もなしに特例が受けられます。
そして、この場合の「一定の割合の減額」は80%で、つまりわずか2割を課税価格にできるのです。ただし限度面積があり、330uまで、つまり100坪となっています。


福田ゆみ:80%も減額できれば、鑑定評価の依頼までして相続税を抑える必要はほとんどなさそうですね。
大変勉強になりました。


隅田:では、これで3ヶ月に渡った相続税の講座を終わります。

福田ゆみ:隅田先生、今月もありがとうございました。
来月もよろしくお願いします。




Point
1.不動産は、通常『財産評価基本通達』により評価する。
2.不動産の相続税評価額は時価の8割程度。
3.小規模宅地等の特例により、100坪までの特例居住用宅地等の課税価格は2割に。