福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
今年は梅雨入りが近そうです。晴れの日を大切にしたいと思います。
税務会計講座、今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
今回からは、3ヶ月に渡って相続税のお話をしていきます。
まず今月は、相続というものを理解してもらいたいと思います。
しかし、これは弁護士の専門分野ですので、基礎的なお話しかできませんが。


福田ゆみ:それでは、まず遺言書についてお聞きしていいでしょうか。

隅田:はい。遺言書には、誰々にはどれそれを譲る、と書いていますからね。
実は遺言書にもいくつか種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
代表的なものを2つ言いますと、まずは、紙に手書きで、その内容と日付・氏名を書いて、ハンコを押す。このような遺言書を「自筆証書遺言」といいます。


福田ゆみ:全部手書きなのですか?

隅田:はい。手書きですし、日付・氏名・ハンコ、どれか1つでも無ければ無効です。
民法の中で有効な遺言書の形式を定めているからです。
ですから、遺言書が見つかっても、家庭裁判所による検認という手続があります。
ちなみに、書かれているのが紙かどうかは問いません。
この遺言の方法は、遺言の存在を秘密にでき、費用も少なくてすみますが、なくす恐れがあります。
配偶者や弁護士などに預けたり、貸金庫に保管したりすれば安心ですが、“完全に秘密”にするのは難しいです。
さらに、そのように預けている間に書き換えられてしまう恐れもあります。


福田ゆみ:なくしたり、書き換えられたりしたら、元も子もないですね。

隅田:次に、公証人によって作成する「公正証書遺言」というものがあります。
証人2人が立ち会う中で、公証人の前で遺言の趣旨を口頭で述べるなどの手続を経て、本人と証人がそこにサインをしてハンコも押します。
この遺言書は、公証人役場に保管されますから、なくなったり書き換えられたりする恐れはありません。また、死後の検認手続もいりません。しかし、手続が厳格かつ複雑で、しかも費用がかかります。


福田ゆみ:簡単に聞いただけですが、とても厳格な感じがします。

隅田:そうなんですよ。私も証人として立ち会ったことがありますが、氏名・住所・生年月日を本人に言ってもらう時のことです。人間ですから、思い出せなくなったり出てこなくなったりすることがありますが、周りの人は教えられないのです。
うっかり教えてしまったら、別の日にやり直すことになります。


福田ゆみ:そんなに厳しいのですね。「自筆証書遺言」の方が良さそう。

隅田:それでも、私が実務で関わっている限りでは、けっこう「公正証書遺言」は利用されています。それだけ、書き換えられないようにしたいのかもしれません。

福田ゆみ:「公正証書遺言」は、それだけ選ばれているのですね。
ちなみに、遺言の内容は、後で変更できるのでしょうか?


隅田:できます。法的には「撤回」と言いまして、原則として遺言の方式によります。

福田ゆみ:しかし、そのようにして作成された遺言書でも、家族としては内容に納得できないこともありますよね。
遺言書をなかったことにすることはできるのでしょうか?


隅田:現実に、誰かに脅されて作られたもの、認知症状態の時に作られたものなどであることは否定できませんので、「遺言無効確認の訴え」という制度があります。
しかし、遺言書をなかったことにすることはさすがにできません。
そこで、家族で話し合って決める方法があります。「遺産分割協議」というものです。
これは、遺言書がない相続ではもちろんしなければなりませんし、遺言書のある場合でも、こちらを優先させることができます。
その結果を記した書類を「遺産分割協議書」と言います。


福田ゆみ:「遺産分割協議書」というのですね。
その時は例えば、奥さんが1/2、残りは子どもが均等に、と決めるのですか?


隅田:いま言ってくれたのは、「法定相続分」のことですね。
そのようにする必要はありません。


福田ゆみ:えっ、“1/2と残り均等”は絶対ではないのですか?

隅田:絶対ではありません。
「法定相続分」とは、「このように分けるのが一番よい」と民法が定めている目安で、いわば権利です。“権利”ですから、主張することもできますが、反対に主張しないこともある、というわけです。
実際に、すべて奥さんが相続するケース、次男さんが1円も相続しないケースもあります。


福田ゆみ:意外ですね。相続はみんなが欲しがって、なかなかまとまらずケンカになるものだと思っていました。笑。
そのような協議結果になるのは、何か理由があるのでしょうか?


隅田:まず、昔存在した「家督相続」の考え方が影響しているのだと思います。
簡単に言えば、長男が家というものを丸ごと相続する、次男で生まれたら養子に出てその家の後を継ぐ、というものです。
これは昔の民法の規定にあったものですが、1947年の民法改正時に廃止されています。


福田ゆみ:そう言われると、廃止された今も少なからず残っている感じがします。
他にも理由があるのですか?


隅田:次の理由は、税制とも関係するのですが、分割の仕方によっては税額が減らせるのです。
これは「配偶者の税額軽減」という制度で、配偶者が総財産の2分の1または1億6千万円のどちらか大きい額の財産を相続すれば、その財産に係る税額は払わなくてよいことになっています。
詳しくは別の機会にお話しします。


福田ゆみ:税金を払わずにすむというのは、大きいですね。

隅田:他にも考えられるのが、いわば“あとできっちり分けるからひとまず”というものです。
つまり、財産分与は贈与など相続以外の方法でも可能ですし、しかも、贈与でも贈与税のかからない特例がいろいろありますので、それらを上手に利用すれば税金を抑えつつ財産分与ができる、というわけです。
こちらも税金の話ですので、詳しくは別の機会にお話しします。


福田ゆみ:その反対に、「生前にたくさんもらったから」という理由で遺産はもらわない、というケースもきっとありますよね。笑。

隅田:はい、あってしかるべきです。

福田ゆみ:では、遺産分割協議は何時までに終わらせなければならないのでしょうか?

隅田:法律上、期限は決まっていません。

福田ゆみ:決まっていないのですか?

隅田:もちろん、早く終わらせるに越したことはありません。いつまでも揉め続けて、子々孫々の代でも続くようでは、家族も増え、一向にまとまらないでしょう。
また、相続税の観点で言えば、10ヶ月が申告と納付の期限です。実は、この期限を過ぎても分割が未確定の財産があると、ひとまず法定相続分で税務署に申告することになるのですが、それに対応する相続税について、「配偶者の税額軽減」は受けられず、納めなくてもいい税金を納めることになります。
ただし、確定すれば、納めなくてよかった税金はちゃんと還ってきます。


福田ゆみ:なるべく早くした方がよさそうですね。
その一方で、公平に分けたくても分けづらい財産がある、そういう理由で長引くことはないのですか?
例えば、持っている財産が不動産1つぐらいしかない場合もありますよね。下手したら、売らなければなりませんよね。


隅田:あるかもしれません。しかし、「代償分割」という方法で解決できます。
例えば、相続人の誰かが不動産を相続し、かつ今現在十分に現預金を持っている場合、他の相続人にその現預金を分け与えれば、金額上は公平に分けられます。
この現預金のことを「代償金」と言います。


福田ゆみ:そういう方法もあるのですね。とても勉強になりました。
でもいま相続は起きていないです。笑。今度友達に教えますね。


隅田:ぜひ教えてあげてください。
では今月の税務会計講座は終わりにします。


福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がある。
2.遺産分割協議による際は、法定相続分を目安に、なるべく早く遺産を分割するとよい。
3.代償分割という方法により相続人間で遺産を公平に分割することもできる。