福田ゆみ:みなさん、こんにちは。福田ゆみです。まだまだ寒い日が続きますね。
今月も隅田先生に税務会計講座をしていただきます。よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
今月は所得税の「税率」についてお話します。


福田ゆみ:税率、と言いますと?

隅田:所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、何段階にも区分されているという特徴があります。

福田ゆみ:そう言われれば、所得が増えていくと税率は上がっていきますよね。
詳しく教えてください。


隅田:はい。このような税率のことを、「超過累進税率」と言います。
注意してほしいのですが、「累進税率」と「超過累進税率」は違います。


福田ゆみ:どのように違うのでしょうか?

隅田:「累進税率」とは、課税標準(所得税における課税所得額など)が一定額以上となった場合に、より高い税率を適用するものを言います。
この累進税率の中に、「単純累進税率」と「超過累進税率」があるのです。
つまり、課税標準が一定額以上となった場合に、その超過金額に対してのみ、より高い税率を適用するのが「超過累進税率」です。
これに対し、課税標準全体に高い税率を適用する場合は「単純累進税率」と言います。


福田ゆみ:「累進税率」にも、「単純累進税率」と「超過累進税率」があるのですね。
その超過累進税率ですが、最近、最高税率が引き上げられたと聞いたことがあります。


隅田:そうなんです。
5%から始まって、10%、20%、23%、33%、40%、そして平成27 年からは45%が設けられました。



福田ゆみ:45%・・・!
どれだけ稼げばそんな税率になるのでしょうか?


隅田:課税所得が4000万円を超えれば、です。

福田ゆみ:私もそれだけ稼いでみたい。笑。
ところで、「分離課税」という言葉がありましたが・・・?



隅田:はい。所得税には「申告分離課税」という制度があります。
原則は、各種の所得金額を合計し、総所得金額を求め、これについて税額を計算して税金を納めます。これを「総合課税」と言います。
ところが例外として、他の所得と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告により税金を納める「申告分離課税」と言うのもあるのです。


福田ゆみ:「申告分離課税」の場合は、どのように税率が違うのですか?

隅田:例えば、土地建物等の譲渡による譲渡所得の税率は、その土地建物等を5年以上保有していた場合は15%、5年未満の場合は30%です。
また、株式等の譲渡所得の税率は、年によって変わることもあるのですが、現在は上場株式等も一般株式等も15%です。
これらの詳しい制度や所得の計算方法については、実は内容が盛りだくさんですので、機会があればお話しします。


福田ゆみ:ところで、「超過累進税率」も、「申告分離課税」になる所得にそれぞれ税率があるのも、“担税力に見合った課税”が理由ですか?

隅田:それについて、少し掘り下げましょう。
そもそも税金には“富の再分配”の機能があります。
富裕層から貧困層へ所得を移転させるのが、“富の再分配”ですね。
この点、「累進税率」によって税金の持つ“富の再分配”の機能はいっそう働くと考えられます。
次に、ゆみさんが言ってくれましたように、“担税力”という観点でも、高所得者には担税力が“より”あると考えられますから、「累進税率」は理にかなっています。
しかし、もう1つ考えなければならないのが、経済への影響です。


福田ゆみ:経済への影響、と言いますと?

隅田:例えば、株式等の譲渡所得に高い税率を設定すれば、株の取引は停滞し、景気が悪くなりますよね。
かと言って、加熱した市場の沈静化のために税率を上げることもあります。
つまり、政策的に経済の安定を図るために、税率を変えることもあるのです。
そこで、ここからはちょっと難しい経済学の内容になりますが、「累進税率」には「ビルトイン・スタビライザー」としての役割があると言われています。


福田ゆみ:「ビルトイン・スタビライザー」とは、何でしょうか?

隅田:経済に制度的に組み込まれていて、景気の変動とともに自動的に経済の安定を図るように作用する機能のことです。
自動安定装置と訳されることもあります。
これは先ほどの、取引の活性化や沈静化のために税率をコロコロ変えるものとは異なります。


福田ゆみ:では、「累進税率」によってどのように経済が安定するのでしょうか?

隅田:例えば、好景気の時は、みんな所得が多いでしょう。このような時に税率が低ければ、残りの自由に使える部分、これを「可処分所得」というのですが、可処分所得も多くなります。
ゆみさんは、自由に使えるお金があったら、どうしますか?


福田ゆみ:それは、パーっと使いたいです。

隅田:同じように、みんなも「消費」に使いますから、ますます景気は良くなるでしょう。「超」好景気といったところでしょうか。


福田ゆみ:ますます景気が良くなるのは、いいことではないのですか?

隅田:経済学では、景気循環の存在、つまり好景気と不景気が交互に来ることが知られています。
好景気はいつまでも続かないのです。
「超」好景気の後に不景気が来たら、その反動は大変なものでしょう。
ですから、「超」好景気にならない仕組みが必要になります。
そこで、「累進税率」を採用すれば、好景気には高い税率が適用されますから、可処分所得は少なくなります。
これで、みんなの「消費」は抑えられます。

続いて反対に、不景気の時は、みんな所得が少ないでしょう。このような時に税率が低ければ、可処分所得はそこそこ残ります。
その可処分所得でみんなに「消費」してもらえば、どうなるでしょうか?


福田ゆみ:少しずつ景気は良くなると思います。


隅田:そういうことです。
つまり、「累進税率」には、好景気には高い税率によって可処分所得を減らし、消費を抑える、不景気には低い税率によって可処分所得を残し、消費を促進させる機能があるのです。


福田ゆみ:税率をその都度コロコロ変えても、結果は同じになると思うのですが。

隅田:そうとも言えません。
実際に税率を変えるには、法律を改正しなければなりません。その手続には知ってのとおり時間がかかります。
つまり、好景気や不景気を観測してから、税率を変えて安定させるまでに時間差が生じてしまうのです。
これに対して、事前に「累進税率」を定めておけば、時間差がそうとう解消される、というわけです。


福田ゆみ:「累進税率」は、こんなに奥が深かったんですね。とてもよく分かりました。

隅田:それでは、3ヶ月続きました所得税はこれで終わりです。

福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。
来月はどんなテーマか楽しみです。


Point
1.所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除き、「超過累進税率」である。
2.所得税には、他の所得と合計しない「申告分離課税」がある。
3.累進税率には、「ビルトイン・スタビライザー」(自動安定装置)としての役割がある。