福田ゆみ:皆さん、こんにちは。福田ゆみです。
4月になり、春もいよいよ本番ですね。
税務会計講座、今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい。よろしくお願いします。
先月に引き続きテーマは法人税ですが、今月は「益金」と「損金」についてお話しします。


福田ゆみ:私も聞いたことがあるのですが、会計では「収益」や「費用」と言うものを、法人税では「益金」や「損金」と言うのですよね。

隅田:はい。そうです。
会計では、「収益」から「費用」を差し引いて、「利益」を計算します。
これに対して法人税では、「益金」から「損金」を差し引いて、「所得」を計算します。
「収益」と「益金」、「費用」と「損金」、「利益」と「所得」は、だいたい同じなのですが、少し違いがあります。


福田ゆみ:呼び方が違うだけ、ではないのですね。
では、なぜこのような違いがあるのでしょうか。


隅田:これは、目的が会計と税務で異なるからです。
会計は、一定期間の経営成績や一定時点の財務状態を明らかにするのが目的です。
これに対して税務は、“課税の公平性”に力点を置いています。


福田ゆみ:“課税の公平性”とは言いますが、会社にとって必要な経費は経費として認められるべきだと思うのですが。


隅田:決して、必要な経費さえも認めないということではありません。
会計で言う収益のほとんどは益金ですし、会計で言う費用のほとんども損金です。
さらに、「損失」と言って、単発的に発生するものも、ほとんどは損金に該当します。
しかし、そのように会計処理された「収益」の中には、それを益金にすると、二重課税になってしまうものや、政策的に望ましくないものもあります。
一方の「費用」にも、罰金的な意味合いのある費用や、無駄遣いと考えられる費用もあるでしょう。
また、法的に支払義務が確定していないのに、“正しい経営成績を表す”という会計側からの要請のために、費用として会計処理している場合もあります。


福田ゆみ:なるほど。“課税の公平性”とは、そういうことだったのですね。
そして、「収益」と「益金」、「費用」と「損金」は、ほとんど同じということもよく分かりました。
すると、「利益」と「所得」もほとんど同じですよね?


隅田:そうなんです。しかも会社は、“決算”という行為により「利益」の計算をすでに終えています。
そこで、法人税申告の実務では、「益金」と「損金」から「所得」を計算するという作業を行いません。代わりに、「利益」から「所得」を計算するための調整を行います。


福田ゆみ:それは、どのように行うのですか?

隅田:大きく4つの調整項目があります。
・益金算入 「収益」ではないが「益金」になる項目
・益金不算入 「収益」ではあるが「益金」にならない項目
・損金算入 「費用」ではないが「損金」になる項目
・損金不算入 「費用」ではあるが「損金」にならない項目


福田ゆみ:確かに、この4つの項目を調整すれば、「所得」が計算できますね。
では、具体的にどのようなものがあるのか教えてください。


隅田:はい。まず「益金算入」項目からです。
一例を挙げると、会社が会計処理していない貸付利息が該当します。


福田ゆみ:え? 会計処理していないのに、ですか?


隅田:その疑問、もっともです。
“会計処理していない”ということは、そもそも無利息で貸す約束をしたなどの理由があってのことですよね。
ですが、前回の講義でお話ししましたように、一定の目的を達成するために設立されたのが法人です。営利目的の法人ならば、金銭の貸付行為からも収益を獲得しようとするに違いない、という理屈で、益金に算入するのです。
「益金算入」項目のもう1つの例は、会社が会計処理していない資産受贈益です。時価より安く買ったり、プレゼントしてもらった資産があれば、時価との差額を益金に算入します。


福田ゆみ:会計処理していなくても、税務では漏らさず益金にしなければならないのですね。
次に、「益金不算入」項目にはどのようなものがあるのですか?


隅田:これは、法人税等の還付金や受取配当金が該当します。
還付金に課税すると二重課税ですし、配当金も課税後の残りが原資ですから二重課税になってしまいます。


福田ゆみ:あれ? 前回、配当金も課税すると言いませんでしたか?

隅田:実は配当金は、納税者が申告してはじめて益金不算入になる性質のものなのです。
専門用語でこれを「任意申告調整事項」と言って、申告してもいいし、しなくてもいい、申告を忘れれば二重課税で、それについて税務署は何もしてくれません。


福田ゆみ:申告を忘れると二重課税・・・、厳しいのですね。
次に、「損金算入」項目というのも、会計処理していないのに損金算入するものなのですか?


隅田:はい。法律上金銭債権が消滅した場合に認められる貸倒損失などが該当します。


福田ゆみ:そして最後の「損金不算入」項目は、とても多そうなのですが・・・。

隅田:はい。まずは罰金的な意味合いのあるものです。
税金を納期限より遅れて納付したことに伴う延滞税や、交通反則金が該当します。


福田ゆみ:しっかり法律を守っている人は払わなくてよいものですね。よく分かります。
次の、無駄遣いと考えられる費用というのは何でしょうか?


隅田:交際費や寄附金が該当します。
どちらも、経費性が曖昧ですよね。しかも、そのような費用をもし損金として認めると、その経費の一部を国が“負担”することになるからです。


福田ゆみ:よく聞く交際費の経費性は分かりますが、国が“負担”とは、どういう意味でしょうか?

隅田:例えば、とある会社の現時点の所得が100万円とします。
税率を30%とすると、このままでは、30万円の税金を納めることになります。
そこで、100万円を交際費で使い切り、所得をゼロにしました。すると、30万円の税金は払わなくてもよくなります。
これはつまり、国に納めるべき30万円を、交際費に使うことができた、ということです。
立場を国にしてみれば、手に入るはずの30万円が、交際費に使われてしまったことになりますよね。


福田ゆみ:本当ですね。“負担”したことになっています。
その次の、支払義務が確定していない費用には、どのようなものがあるのでしょうか?


隅田:貸倒引当金繰入額や、返品調整引当金繰入額が該当します。
どちらも、将来の貸し倒れや返品に備えて見積計上するものであり、債務として確定したわけではありません。
現場からの要請があるので、これらの繰入れのうち貸倒引当金は、中小企業には一定の限度額までは認められていますが、それを超えると損金不算入です。大企業にも昔は限度額がありましたが、現在は認められていません。

このあたりでひとまず「損金不算入」項目の例示は終わりますが、実際にはまだまだあります。


福田ゆみ:率直な感想ですが、初めに「利益」と「益金」、「費用」と「損金」はほとんど同じと聞いて、なんだ簡単じゃない、と思いましたが、調整項目がとっても多くて難しいですね。

隅田:難しいから、税理士がいるのです。

福田ゆみ:なるほど。こういう時が税理士先生の出番なのですね。

隅田:といっても、法人税の基本構造はしっかり理解していただきたいです。

福田ゆみ:はい。先生のおかげで、よく理解できました。

隅田:では今回の講義は終わりにいたします。

福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.法人税の「所得」は、課税の公平性に力点を置かれて計算される。
2.法人税の「所得」は、「利益」から、益金算入・不算入項目、損金算入・不算入項目を調整して計算する。
3.「費用」のうち、罰金、無駄遣い、債務未確定のものなどは「損金不算入」項目となる。