福田ゆみ:みなさんこんにちは。福田ゆみです。
11月になりました。紅葉が待ち遠しいですね。
今月も隅田先生、税務会計講座をよろしくお願いします。


隅田:よろしくお願いします。
交際費について続けてお話ししていますが、最後の今回は、領収書のない交際費・相手方の帳簿の記載がない交際費の処理についてお話しします。


福田ゆみ:そういう交際費があるのですか?

隅田:その疑問、この2か月の内容をよく理解していれば当然出てくると思います。
交際費に限らず、どのような支出にも、請求書や領収書があり、内容を帳簿に記載していなければなりません。会社の経営のため、そしてその後の検証のために重要なことです。
そして接待交際の支出は、無駄遣いの側面がありますから、なおさら領収書を保存し、どんな接待交際だったか記録しておかなければなりません。
にもかかわらず、接待交際の支出には、そのような領収書がない場合、あるいは内容を帳簿に記載していない場合があります。


福田ゆみ:どういう場合でしょうか?

隅田:いろんなケースがあると思います。
営業のために接待したものの、物別れに終わったら、この接待交際の支出は費用にしていいか迷うでしょう。


福田ゆみ:はい、分かります。

隅田:あるいは、オモテに出せない、秘密にしておきたい支出もあると思います。
どのようにオモテに出せないかは、ご想像にお任せします。


福田ゆみ:笑。

隅田:それなりの規模の会社ならば、経理部が予算を握っていますから、営業部員の接待交際の支出を精算しなければそれまでです。オモテに出せない支出も同様です。
しかし、会社の役員がトップセールスで接待交際を行う場合に、支出を精算しなくてよいかというと、そういうわけにもいかないでしょう。
こうして会社から資金は流出します。その事実を会計上記録しなければなりません。


福田ゆみ:なるほど。重大さがよく分かりました。
では、どのように処理するのですか?


隅田:はい。説明の便宜上、税務上の処理をまず説明します。
その中でも、最も厳しい扱いに、「使途秘匿金」と言うのがあります。
これは、「法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名等をその法人の帳簿書類に記載していないもの」のことです。


福田ゆみ:「使途不明金」とは違うのですか?

隅田:「使途不明金」は似た言葉ですね。
目的が分からない支出を言います。
これには、支払先が分かる場合と分からない場合があります。
預金口座からお金を引出して直接支払ったものの、何のメモも残っていない「使途不明金」もあれば、領収書はあり、そこに受領者は書いていても、目的が分からない「使途不明金」もあります。


福田ゆみ:その「使途不明金」とは別に「使途秘匿金」というものがある、ということですか?

隅田:少し違います。
「使途秘匿金」は、文字からも分かるように、秘密にしている、しかも意図的に、という意味が含まれています。
「使途不明金」は、広く言えば、意図的に秘密にしているのかどうかまでは問うていません。


福田ゆみ:「使途不明金」の中に「使途秘匿金」がある、ということなのですね。

隅田:そして、「使途秘匿金」に該当する支出額は、「交際費課税」とは別の適用を受けます。具体的には、
・全額が損金不算入
・支出総額の40%の法人税を追加で払う
という扱いになります。


福田ゆみ:ということは、どういうことですか?

隅田:例を出しますので、考えましょう。
中小法人で、使途秘匿金が100万円あるとします。そして使途秘匿金を除いた所得が1000万円です。
この支出が、もし相手方の氏名等を帳簿に記載し、「交際費」ではなく「会議費」の処理ができるものであれば、所得は900万円です。
税率を20%とすると、法人税はいくらでしょうか?


福田ゆみ:900万円 × 20% = 180万円です。

隅田:一方、秘密にし、「使途秘匿金」となれば、損金にさえなりません。所得は1000万円です。
加えて、100万円の40%の法人税を払うことになります。
1000万円の20%と、100万円の40%の合計はいくらですか?


福田ゆみ:200万円 + 40万円 = 240万円です。
60万円も増えるのですね。


隅田:増えるのは法人税の60万円だけではありません。この4〜5割の地方税も払うことになります。すると合計は、
60万円 × 1.4〜1.5倍 = 84〜90万円。


福田ゆみ:「使途秘匿金」の100万円とほぼ同じなんですか!

隅田:はい。ところが、それだけの税負担を被っても秘密にしたいことのある会社もあるようです。

福田ゆみ:すると、「使途秘匿金」は、会計ではどう処理すればいいのでしょうか。

隅田:2つのケースが考えられます。
1つ目は、あまり考えにくいですが、最終的にはその支出額を社長等が負担するケースです。支出額と同額が会社に戻ってくる見込みがありますから、資産科目の「貸付金」と処理しましょう。
2つ目は、会社が負担するケースで、こちらの方が多いと思います。会社から資金が流出している事実に着目し、費用科目の「交際費」と処理しましょう。


福田ゆみ:「貸付金」か「交際費」。う〜ん、こういう処理ぐらいしかないのですか?

隅田:あくまで「使途秘匿金」と処理すると、そうです。
税負担を考えると、このような処理はあまり賢い処理でないことは分かると思います。
そこで、そのような接待交際を行う頻度の高い役員等の毎月の給与支給額を前もって多くしておく方法もあります。


福田ゆみ:給与にする方法ですか。

隅田:はい。給与であれば、よほど高額でない限り会社の損金として認められますので、こちらのほうが賢いやり方だと思います。
さらに、現場では、役員等に「渡切交際費」というものを支給するケースがあります。
接待等に使えるよう役員等に事前に支給する金員のことで、精算を行いませんから“渡し切り”です。
精算を行わないということは、帳簿にも現れず、使途を問わないことでもありますから、通常なら「使途秘匿金」になるような支出が会社の帳簿に直接現れることもありません。
ただし、「渡切交際費」は毎月同額でなければなりません。


福田ゆみ:今のお話の中に、“よほど高額でない限り”や“毎月同額の「渡切交際費」”というのがありましたが・・・?

隅田:役員等は立場上、自分で自分の給与額を決められ、高くすることも低くすることもできます。しかし、これには2つの不都合があります。
まず、交際費課税が適用されないという不都合です。実態としては接待交際に使われているにもかかわらず、給与として役員等に資金が支給される場合に、交際費課税が適用されないとあっては不公平ですよね。
もう1つが、利益操作が行われるという不都合です。一般に法人税率は給与所得税率より高いですので、法人税と給与所得税の合計が少なくなるような給与の額を自由自在に設定される。このようなことを、課税庁側は認めたくないでしょう。
そこで、損金として認められる役員等への給与額は、“不相当に高額でない額”を“毎月同額”で支給する場合を原則としています。


福田ゆみ:ということは、秘密にしたい支出が突然あって、それを役員さんへの臨時ボーナスとして処理することは・・・?

隅田:できません。
正確には、賞与の額が損金にならない、ですね。
先ほどの、使途秘匿金が100万円、所得が1000万円のケースに当てはめると、使途秘匿金100万円をボーナスとして処理すると、使途秘匿金の扱いは受けなくなるとはいえ、所得は1000万円で変わりません。
税率を20%とすると・・・。


福田ゆみ:200万円で済みます。

隅田:そうですね。「使途秘匿金」ほどの税金にはなりませんから、ボーナスとして処理することも選択肢の1つです。

福田ゆみ:でも、できることなら毎月の渡切交際費の額の範囲で抑えたいですね。
「使途秘匿金」について、よく分かりました。


隅田:以上で、3か月に渡ってお話しした交際費についての講座はこれで終わります。

福田ゆみ:先生、どうもありがとうございました。

Point
1.相当の理由がなく氏名等を記載していない金銭の支出を「使途秘匿金」という。
2.「使途秘匿金」に該当する支出は損金不算入、かつ支出額の40%の法人税が追加課税。
3.不相当に高額でない「渡切交際費」を毎月定額支給すれば、記録のない接待交際の支出も損金に。