福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
税務会計講座が1周年を迎えました。
税理士法人SASGAを今後ともよろしくお願いします。
そして今月も隅田先生、税務会計講座をよろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
相続税のお話をしていますが、先月は相続というものの内容が中心でした。今月は税金の講座です。
では早速ですが、ゆみさんは、“なぜ相続税を納めなければならない”、と思いますか?


福田ゆみ:法人税の時も同じような質問がありましたが、相続税は本当に疑問です。でも、今ひとつ分からないです。
子どもに全財産を与えたい親もいますよね。せっかく貯めても、税金を払った残りしか与えられないということですから。


隅田:では、これを機に学びましょう。

まず、“富の再分配”という目的があります。
相続というのは相続人への富の移転です。一部の裕福な家族から富が分散するように、政府が相続税として徴収する、ということです。


福田ゆみ:本当にできているのでしょうか?

隅田:この目的は、たいていの税金に共通していますからね。
そして実際に、3代もすればほとんどなくなると言われています。

次に、“不労所得”という理由があります。
法律上は、相続財産の取得は所得ではないので、所得税が課税されません。だからといって、税を徴収せずにいれば、貧富の差が生じます。
そこで、相続税という制度を設けている、ということです。


福田ゆみ:すると、働けない子どもや、障害のある子どももいますが、そんな子にはその“不労所得”という形でしか親は与えられないですよね。このようなときにも相続税がかかるのですか?

隅田:それについては、「未成年控除」や「障害者控除」という制度で税額を減らすことができます。詳しい説明はここでは省略しますね。ですが、十分に機能しているとは言いづらいですね。

次に、“所得税の精算”という考え方があります。
相続財産は、生前に本人が稼いだものです。その中には所得税を払っていないものもあるだろうから、これを機に相続税として納めなさい、ということです。


福田ゆみ:えっ? ほとんどの人はきっちり税金を納めていますよ! 二重課税にはならないのですか?


隅田:やはり反感を買いますね。
では、こんなケースはどうでしょう。
難病にかかり、最後の望みをかけて最先端の治療を受けることにしました。ところがそれは保険適用外で、大変高額なのです。そこで、リビング・ニーズ特約のある保険に入っていたので、治療代に充てるため保険金1億円を受け取りましたが、使い切ることなくこの世を去りました。
リビング・ニーズ特約といいますのは、余命6ヶ月以内と判断されたとき、死亡保険金などの一部を前払いで受け取れるというものです。この保険金は本人にとっては非課税所得なのですが、残金は相続財産です。さて、相続税は非課税でいいでしょうか?


福田ゆみ:難しいですね・・・。そういう場合は、非課税ではいけないと思います。
1つ1つの財産ができた理由で、課税か非課税か分けられたらいいのに。


隅田:私も、財産形成の経緯に応じた課税であってほしいと思います。

最後は、“社会への還元”です。
それだけの財産を得たのは、自分の力だけではなく、周りの助けもあったのだから、相続を機に社会に還元しなさい、ということです。


福田ゆみ:最後はそういう心の持ちようなのですね。笑。


隅田:はい。すべての税金に共通していますが、こういう気持ちで税金を納められたら気は楽ですね。

では続いて、相続税額の計算のお話です。
実は、この計算には大きく2通りの考え方があり、日本では現在、この両方を併用しています。

まず、「遺産課税方式」というものです。
これは、相続人の人数や相続の配分などに関係なく、被相続人の財産に着目して評価をするやり方です。
すると、税額は先に決まり、税金を差し引いた残りの財産を相続人で分割する、という流れになります。
もう1つが、「遺産取得課税方式」というものです。
これは、相続人1人あたりがどの程度の財産を相続したかに着目して相続税額を決定するやり方です。
すると、遺産分割方法を先に決めて、それから各人の税額が決まる、という流れになります。


福田ゆみ:この2つを、日本はどのように併用しているのですか?

隅田:「法定相続分課税方式」と言って、まず@「遺産課税方式」のように、まず相続人が法定相続分で遺産を分割したと仮定し、1件の相続に係る相続税額を決定します。次に、A「遺産取得課税方式」のように、決定された相続税額を、各人の遺産分割割合に応じて按分負担させることにしています。
つまり、全員の負担する相続税額は決まっているけれど、各人の負担額は遺産分割が決まるまで決まらない、ということです。
そして相続税には、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」で計算する「基礎控除額」があり、@の相続税額を決定する段階で総財産額から控除します。ここでプラスであれば相続税がかかり、ゼロ以下であれば相続税はかからないことになっています。


福田ゆみ:そして、「配偶者の税額軽減」という制度があるのでしたよね。

隅田:はい。
「配偶者の税額軽減」とは、配偶者の相続した財産(相続財産総額の半分または1億6千万円のどちらか多い額を上限)に対応する相続税はかからない、というものです。
例えば、相続財産総額が2億円で、配偶者が1億2千万円を相続すれば、相続財産総額の半分である1億円を超えますが、1億6千万円には満たないですから、1億2千万円に係る相続税は納めなくていい、ということです。
これは、相続税額を各人に按分負担させた後の適用です。


福田ゆみ:ところで、ここでいう相続財産はどこまでなのでしょうか?

隅田:それは、正真正銘の相続財産と、みなし相続財産、そして一部の生前贈与財産です。
正真正銘の相続財産の説明は省略します。
「みなし相続財産」とは、被相続人の財産ではありませんが、人の死去を機に相続人等が取得するので相続財産として取り扱う、というものです。
例えば死亡保険金は、保険会社の財産ですが、相続人等が受け取りますので、これに該当します。ただし非課税枠があり、現行制度では「法定相続人の数×500万円」となっています。
死亡退職金も、勤めていた会社の財産ですが、相続人等が受け取りますので、該当します。これにも同様の非課税枠があります。


福田ゆみ:一部の生前贈与財産とは、どういうものでしょうか?

隅田:これには2種類あり、相続開始前3年以内贈与財産と、相続時精算課税による贈与財産です。
どちらも、贈与が既に済んでいますから、これらは被相続人の財産ではありません。
しかし、1つ目の3年以内贈与財産は、相続税の課税を逃れるために駆け込みで行ったという側面がありますから、相続財産に上乗せすることになっています。
もう1つの相続時精算課税とは、生前贈与を行う際に、2500万円までは贈与税がかからないとする特例を選択する代わりに、相続発生時には相続財産に上乗せして相続税を払う、というものです。


福田ゆみ:反対に、借金があれば相続財産から引けるのですか?


隅田:はい。債務控除といって、控除することができます。
債務には、借金はもちろん、未払金や預り金も含みます。
また、葬式費用も一定の範囲で控除することができます。
ただし、注意してもらいたいのが、“誰が債務を承継するのか”“誰が葬式費用を負担するか”というところです。
というのも相続税は、被相続人の財産合計から計算するのではなく、厳密には、各相続人が取得する財産の合計で計算するからです。ここで、もし承継する債務や負担する葬式費用の方が多くてマイナスになる人がいれば、それは切り捨ててゼロにします。
ですから、マイナスになるような分割をしてしまうと、余計な相続税を払うことになってしまいます。


福田ゆみ:そういえば、お墓や仏壇は非課税だとよく聞くのですが。

隅田:祖先をまつる習慣を尊重するという趣旨で、非課税になっています。
あくまでそういう趣旨ですから、その趣旨から外れるほどに高価な仏具等は課税になります。


福田ゆみ:いろいろと気を付けることがたくさんあるのですね。
今回もたくさん学べました。誰かに話したいです。笑。


隅田:ぜひ話してください。
今回は、相続税の目的と、相続税額の計算方法を中心にお話ししました。


福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.相続税には、「富の再分配」「不労所得への課税」「所得税の精算」「社会への還元」の目的がある。
2.日本の相続税は、「遺産課税方式」と「遺産取得課税方式」を併用した「法定相続分課税方式」で計算する。
3.相続税の対象財産には、みなし相続財産と一部の生前贈与財産を含み、債務や葬式費用は控除できる。