福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
税務会計講座も5回目を迎えました。
今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。

福田ゆみ:今月もテーマは「消費税」ということですが。

隅田:そうですね。中でも今月は、消費税の“免税”という制度がテーマです。

福田ゆみ:免税? 文字だけ見ると、消費税を払わなくていいということですか?

隅田:その通りで、払う必要はありません。
でも、「消費税を記録しなくていい」と理解してもらった方がいいと思います


福田ゆみ:記録しなくていい、と言いますと。

隅田:まず先々月お話したように、消費税は、事業者が「預かった消費税」と「支払った消費税」それぞれを記録し、その差額を納めるものです。
これは、「記録」することが前提にあります。
そこで質問ですが、「記録」という作業、簡単だと思いますか?


福田ゆみ:え? 言っちゃっていいですか?
面倒だと思います。


隅田:はい、それでいいんですよ。とっても正直な意見です。

福田ゆみ:笑。
そういえば、先月の講座。消費税のかからない売買もあるんですよね。
つまり「記録」というのは、これには消費税がかかる、あれにはかからない、という記録のことですよね。


隅田:いいことを言ってくれました。
実際に消費税の記録をしようとすると、まさにそこにぶち当たるのです。
消費税という制度は、このような面倒な作業を事業所に強いるものですから、事業者の事務負担に配慮しなければなりません。
そこで用意しているのが“免税”制度というわけです。
つまり、「消費税を記録しなさい」と強いられる“課税事業者”というのがあり、「消費税を記録しなくていいですよ」と免除される“免税事業者”というのがあるのです。


福田ゆみ:免税事業者は、モノを売ったら、消費税はどうしているんですか?

隅田:法律上は、消費税を預かっていることになります。でも、「納めなくていいですよ」ということです。

福田ゆみ:じゃあ、預かった消費税は誰のものになるんですか?

隅田:事業者のものです。

福田ゆみ:それって、ずるくないですか?

隅田:確かに、消費者から税金を搾り取っておりながら納めないわけですから、そう感じるのは無理もないです。
ところで、「事務負担に配慮すべき事業者」って、どんな事業者だと思いますか?


福田ゆみ:そうですね・・・。やっぱり、記録するのがしんどい会社ですよね。
ちっちゃくやっている会社とかでしょうか。
そう考えると、預かった消費税もちょっとだけ、ということになりますね。


隅田:まさにその通りで、“免税”は小規模の事業者に認められた制度です。
これにはボーダーラインがあり、その1つが、2年前の課税売上高が1,000万円以下、というものです。
これですと、預かる消費税もちょっとだけです。


福田ゆみ:どうして2年前なんですか?

隅田:これは、いつ決算をするかを考えるとよく分かります。
例えば、今年の売上高が1,000万円を超えるかどうか微妙だとします。
1年が終わっても、帳簿を締めるには、どうしてもさらに1〜2ヶ月かかります。
その時になって初めて1,000万円を超えたことが分かりました。
「じゃあ、消費税を納めてください」と言われて、できるでしょうか?


福田ゆみ:準備をまったくしてなかったら、できないです。

隅田:そうですね。帳簿を一からひっくり返すなんてとてもできません。したがって、今年はダメ。
では、次の年だとどうですか?


福田ゆみ:それならいいと思いますけど。

隅田:実はそうでもないんです。
帳簿を締めるのに1〜2ヶ月かかりますよね。その間も今年の事業は進行しています。
記録というのは、リアルタイムでするものです。
実は“免税”なのに、前年の帳簿が締まるまで無駄な消費税の記録をするのでしょうか。


福田ゆみ:そう言われると、1年前というのも都合が悪いんですね。

隅田:だから、2年前なのです。

福田ゆみ:ところで先生、先々月の講座でしたが、安く叩き売ったような場合、消費税は還してもらえるんですよね。“免税”だとどうなるんですか?

隅田:いい質問ですね。
免税事業者には、還ってきません。


福田ゆみ:そんな。

隅田:しかし、事業者が自ら、消費税を記録する事務負担を買って出た場合には、還すのを認めないといけませんよね。
そこで、税務署に提出する届があるのです。『消費税課税事業者選択届出書』と言います。
もちろん、届を出して、逆に納付額が出たら、それはそれで納めなければなりません。
そして反対に、「記録はやめます」に相当する、『消費税課税事業者不選択届出書』という届もあります。ただし、『選択届』の方を出してから2年間は出せない、という縛りがあります。


福田ゆみ:届はいつまでに出すんですか?

隅田:事業年度が始まる前日までです。

福田ゆみ:ということは、叩き売ったその年に届を出しても、還ってこないんですか?

隅田:そういうことです。前年までに出さなければなりません。

福田ゆみ:そんなの、予測できません。

隅田:ただ、こういう届が本当に効果的なのは、大規模な設備投資をするときなんです。
例えば、事業を始めるときに事業所を構えるとすると、造作(ぞうさく)にけっこうお金をかけます。ビルから建てる事業者もあります。当然に「支払う消費税」は多額になります。
ところが、始めたばかりの事業者に、2年前はありません。


福田ゆみ:2年前がないと、どうなるんですか?

隅田:資本金が1,000万円未満であれば、“免税”にされてしまいます。
ところが、この届を出せば、例外の例外で課税事業者になり、消費税が還ってくるのです。
しかも事業開始初年度は、届の提出期限は年度末なので、十分に期間があります。


福田ゆみ:なるほど。消費税は設備投資のときにこそ還ってくるんですね。

隅田:ではそろそろ、一連の消費税の講座をまとめます。
今回の免税制度を、別の角度から見ると、届を出すか出さないか、課税事業者になるかならないかで、税額がまるっきり違ってくる場合があると分かります。
元はといえば、事業者の事務負担に配慮して作られた制度と、そのための届なのですが、税金対策に大いに利用できるのがこれらの制度なのです。


福田ゆみ:税理士の腕の見せどころですね。笑。

隅田:ええ、ほんとそうなんです。
ただ、よく注意しなければならないのが、先に言いました2年間の縛りです。これを踏まえたうえで上手に節税するには、それなりのシミュレーションが必要です。綿密な計画に基づいて利用したいものです。
ということで、消費税はこれでおしまいです。


福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。
消費税、とっても奥が深かったです。
次回も楽しみです。


Point
1.消費税には、消費税を記録しなくていい“免税”制度がある。
2.免税事業者であっても、事業年度開始までに『消費税課税事業者選択届出書』を提出すれば課税事業者になれる。
3.課税事業者になるかならないか、で、消費税額が大きく変わる場合がある。