福田ゆみ:みなさんこんにちは。福田ゆみです。
9月になっても暑いですね。
今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
今月から3か月にわたり、交際費についてお話しします。


福田ゆみ:交際費は“税務上は経費にならない”とよく聞きますが。

隅田:はい。正しく言うともちろん“損金にならない場合がある”ですね。
会計上は経費でありながら、税務上は損金にならない場合があるという特徴があり、しかも、交際費に該当するかどうかの慎重な判断が必要な場合もある項目ですので、丁寧にお話ししていきます。
まずは呼び方のお話です。一般的にはこの制度を「交際費課税制度」と言いますが、正しくは「交際費等の損金不算入制度」です。


福田ゆみ:交際費“等”なのですか?

隅田:はい。法律では交際費“等”と呼び、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他の事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義しています。
呼び方や定義について気になるところがあると思いますが、詳しい話は回を改め、ここからは「交際費等」と言っていきます。


福田ゆみ:では、なぜ“損金にならない場合がある”のでしょうか?

隅田:この理由は、一言で言えば“無駄遣い”だからです。
導入されたのは昭和29年。趣旨は、資本蓄積の促進にありました。つまり、交際費等を損金不算入にし、支出を抑えさせて、資本の蓄積を図ったのです。
ちなみに当時は、株主への配当を抑えさせるなど、資本の蓄積が目的の施策がほかにもいくつもあったそうです。


福田ゆみ:損金不算入になると、具体的にどうなるのでしょうか?

隅田:例えば、会計上の利益(=所得)が1000万円の会社が、一個人に300万円の自動車をプレゼントするとします。
会社からは300万円の自動車が出て行った、もしくは購入によって300万円のお金が出て行きますから、300万円の経費を計上します。すると、利益は700万円になります。
では、所得はどうなるでしょうか?


福田ゆみ:利益の700万円に、損金不算入額の300万円を足したものが所得ですよね。

隅田:はい。ですから所得金額は1000万円となり、プレゼントしようがしまいが、所得金額は同じになります。
ちなみに、この自動車を会社の資産として事業に使用していたならば、300万円は減価償却費として何年かにわたって経費になり、損金にもなります。


福田ゆみ:それに引き換え、プレゼントすると、お金は出て行っているのにその1000万円の所得に対して税金がかかる、これは大きいですね。

隅田:その一方で、「金は天下の回り物」と言うように、交際費等の額が増えればお金が市場に出回り、経済が活性化するという事実があります。
その点、近年は長引く不景気続きですから、景気の刺激策として交際費等の額が増えるよう、制度は徐々に緩和されています。


福田ゆみ:どのように緩和されているのですか?

隅田:まず、平成26年度に、交際費等という大きな“くくり”の中に「接待飲食費」という概念が新たに設けられました。
そして、交際費等の額のうち、この「接待飲食費」の額の50%相当額を超える部分の金額が損金不算入となりました。
逆に言いますと、「接待飲食費」の額の50%相当額までは損金にできるようになったのです。


福田ゆみ:その「接待飲食費」とは、どういう交際費等を言うのでしょうか?

隅田:「飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その旨につき帳簿書類に次のことが記載されているもの」と定義しています。
イ 飲食その他これに類する行為のあった年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地(例外あり)
ニ その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
ただし、そもそもこの飲食費が、「専らその法人の役員や従業員、その親族に対する接待等のため」であれば、接待飲食費とは言いません。


次に、中小法人に限定の緩和があります。
ここでいう中小法人とは、資本金が1億円以下の法人(事業年度終了の日において大法人による完全支配関係がある普通法人等は除く)なのですが、つい近年まで、交際費等の額の90%以上が損金不算入でした。
それが、何度かの税制改正を経て現在は、交際費等の額が年間800万円を超えるとはじめて、その超過額が損金不算入になるようになりました。
これは実質的には、交際費等の全額が損金に算入できるようになったということです。


福田ゆみ:それはどうしてですか?

隅田:交際費等の額は、取引先の数や会社の資金力に大きく左右されることは想像できると思います。
そして、国内の法人の中でも中小法人の数は圧倒的に多く、国税庁の発表では、平成28年度は、全267万社以上ある法人のうち、資本金が1,000万円以下の法人が229万社以上で、85.9%となっています。


福田ゆみ:確かに、1年で800万円も交際費に使う中小法人は、なかなかないですものね。


隅田:さて、中小法人には、@接待飲食費の規定と、A800万円の規定の両方があります。この関係がややこしいと思いますので、例を挙げて見ていきましょう。

(1)交際費の額は700万円、そのうち接待飲食費の額は200万円です。損金に算入できる額はいくらになりますか?

福田ゆみ:@は、200万円の50%の100万円を超える部分の金額ですから、600万円です。
Aは、800万円を超えてないですから、ゼロです。
@とAのうち少ない方の金額であるゼロが損金不算入額です。
すると、損金に算入できる額は700万円。交際費全額ですね。


隅田:この場合、接待飲食費の規定は中小法人には関係ありません。そして、現実の中小法人の交際費等の額はこの程度でしょう。
次に、(2)交際費の額は3000万円、そのうち接待飲食費の額は1000万円です。損金に算入できる額はいくらになりますか?


福田ゆみ:@は、1000万円の50%の500万円を超える部分の金額ですから、2500万円です。
Aは、800万円を超える部分の金額ですから、2200万円です。
@とAのうち少ない方の金額である2200万円が損金不算入額です。
すると、損金に算入できる額は800万円です。


隅田:この場合も、接待飲食費の規定は中小法人には関係ありません。
では、(3)交際費の額は3000万円、そのうち接待飲食費の額は1500万円です。損金に算入できる額はいくらになりますか?


福田ゆみ:@は、1500万円の50%の750万円を超える部分の金額ですから、2250万円です。
Aは、800万円を超える部分の金額ですから、2200万円です。
@とAのうち少ない方の金額である2200万円が損金不算入額です。
すると、損金に算入できる額は800万円。あれ?


隅田:この場合も、接待飲食費の規定は中小法人には関係ありません。
つまり、接待飲食費が1600万円を超えて初めて中小法人に関係があるのです。しかし、そんなに接待飲食費の額がある中小法人は非常にまれでしょうね。


福田ゆみ:ところで、交際費課税は個人事業者にはどのようになるのですか?

隅田:個人事業者は、交際費は全額を必要経費にできます。
交際費課税制度は法人にだけ適用される制度なのです。法律の定義を見ても分かります。


福田ゆみ:確かに、「法人が〜〜支出するもの」とありますね。

隅田:だからと言って、事業に関係のある交際費しか必要経費にならないのは言わずもがなです。

さてここからは、交際費課税制度の果たす機能について、もう少し掘り下げます。
贈答品をもらった個人は、税務上はこのあと何をすべきですか?


福田ゆみ:税務上とわざわざ釘を刺すということは、所得税申告でしょうか。

隅田:そうです。所得税申告をすべきです。
法人から贈答品をもらい受ければ、その個人は一時所得として申告しなければなりません。
しかし、その人は果たして申告するでしょうか?


福田ゆみ:しないと思います。
でもそれは、きっちり申告している人と比べたら不公平ですし、税務署にとっても税を徴収できなくて不都合ですよね。


隅田:ゆみさんが言ってくれた通りの不都合があります。
ではこの贈答品代を、交際費課税制度により損金不算入にすれば、どうなるでしょうか?


福田ゆみ:贈答品代に応じた税金を法人が払う・・・。なるほど、そういうことですね。

隅田:はい。個人の代わりに法人が納税する、つまり「税負担の転嫁」があるのです。
だからと言って、個人は申告義務が免除されたわけではありません。


福田ゆみ:すると、接待飲食費の制度ができたということは、税負担の転嫁をある程度は目をつむるということでしょうか?

隅田:そこについては、私の考えが交じるのですが、贈答には資産形成の性質がありますから、所得を認識すべきなのはもっともです。
それに対し、飲食にはその場で費消するという性質がありますから、接待飲食を受けた個人が少額のものまで所得として認識する必要はなく、ましてや税負担が法人に転嫁されるのは論理的におかしいのです。
とはいえ、度を越した接待飲食が現実に存在し、黙認すれば世間の批判を浴びますから、歯止めをかけるためには必要と思います。


福田ゆみ:課税する側もいろいろ考えているのですね。
交際費についてよく分かりました。


隅田:では今回の講座を終わります。


福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。



Point
1.接待飲食費の50%は損金算入が可能(法人の規模を問わない)。
2.中小法人には800万円まで交際費等の損金算入が可能(接待飲食費が1600万円以下の場合)。
3.交際費課税制度には、個人から法人への税負担の転嫁の機能がある。