福田ゆみ:皆さんこんにちは、福田ゆみです。
新生活をスタートさせる人も多いと思いますが、皆さんはいかがですか。
今月も税務会計講座、よろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
開業をテーマに、前回は税目を所得税に限ってお話ししました。
今回は横断的に、個人と法人ではどちらが節税になるかをお話しします。
開業にあたり、ひとまず個人で始めて様子を見るべきか、法人設立を断行するべきか、悩んでいる人もあるでしょう。ケースによっては、法人から始めた方が得になることもあります。
また、長年個人事業を営んでいる人の中に、法人にすると税金はどうなるか知りたい人もあると思います。事業を法人に移した場合でも税務上は「開業」ですから。


福田ゆみ:といっても、個人と法人では税目が異なりますよね。計算も違うと思うのですが。

隅田:個人にかかる税目は主に、@所得税、A住民税、そしてB事業税です。
〇所得税は、 (「所得」−「所得控除」)× 速算表の所得税率 − 速算表の控除額 で計算します。ここでの税率は超過累進税率になっていて、課税所得額が増えるにつれ税率は高くなっていきます。
〇住民税は、 (「所得」−「所得控除」)× 住民税率(一律10%) です。所得控除の額は所得税のときとだいたい同じです。
〇事業税は、 (「青色申告特別控除前所得」−290万円)× 事業税率 です。ここでの税率は業種により決まっており、ほとんどの業種が5%です。
これらを簡単にまとめると、所得税と住民税における課税所得はほぼ同額ですから、



〇所得税+住民税:
 (所得−所得控除)×(速算表の所得税率+10%) − 速算表の控除額
〇事業税:(青色申告特別控除前所得−290万円)×5%




と、まとめることができます。

福田ゆみ:法人にはどういう税目があるのですか?

隅田:法人に対しては主に、@法人税、A住民税法人税割、B住民税均等割、そしてC事業税所得割があります。
〇法人税は、 「所得」×法人税率 で計算します。
〇住民税法人税割は、 「法人税額」×住民税率(都道府県・市町村で異なる) です。
〇住民税均等割は、資本金や従事員数によって決められ、都道府県・市町村でも異なります。
〇事業税所得割は、 「所得」×事業税率 で計算します。
これらを、資本金が1000万円以下という前提で簡単にまとめると、@法人税、A住民税法人税割、そしてC事業税所得割は、元をたどれば所得額から計算する税目ですから、1つにまとめることができます。所得が800万円までなら、これらを総合すると税率は23%ほどです。
B住民税の均等割も、従事員の数に関係なくおよそ7万円です。したがって、


〇法人税等:所得×23%
〇均等割:約7万円

と、まとめることができます。

福田ゆみ:そして、設立した法人から給料をとる、ということですね。

隅田:これはちょうど、1つの事業を、個人事業は1人の人間だけで負担し、法人で行えば2人の人間で分担するようなものです。


福田ゆみ:こういう場合でも、給与所得控除は認められるのですか?
事業所得のときは、領収書を集めてはじめて経費になりますよね。
給与所得には、そのような領収書を集める代わりに給与所得控除というのがあって、給与収入額に応じて概算してもいいことになっています。
一方、法人には1人分の経費しかありません・・・。


隅田:確かに、事業を法人と個人の2人で分担といっても、仕事をするのは当の本人1人ですからね。

福田ゆみ:そうです。もし領収書を法人の経費に入れ、さらに給料をとる個人に給与所得控除が認められたら、経費が二重になると思うのですが。

隅田:違和感を覚えるのももっともです。
法律上の結論から言いますと、給与所得控除は認められますので、安心してください。


福田ゆみ:個人事業のときは認められて、法人になると認められない経費もあると思うのですが。例えばマイカーの費用とか。

隅田:事業所が自宅と別にあり、その往復だけのための車の費用は、個人事業ではもちろん経費です。これを法人で経費にするというのは確かに、厳密には正しくありません。
しかし、法人として仕事をするのに必要な車ならば、費用は法人の経費にできます。
このように考えると、個人事業の経費はほとんどそのまま、法人の経費にできることが分かると思います。

各税目について一通り整理ができたところで、比較のためのシミュレーションをします。
事業の利益を300万円とします。これを@個人事業で行う場合と、A法人で事業を行い、300万円を給料でとる場合とで、それぞれどのようになるか考えてみます。
単純化のために、所得控除は基礎控除のみで、38万円とします。


福田ゆみ:個人事業の場合、事業所得は300万円。でも、青色申告特別控除を65万円受ければ、235万円になりますね。

隅田:はい、そうです。したがって、


@個人事業
〇所得税等:(235−38)×20%−97,500円 ≒ 29.7万円
〇事業税:(300−290)×5% = 0.5万円
合計 約30.2万円


合計は、およそ30万円です。
次に法人の場合、100万円が法人の経費に入れられますし、給与収入が300万円のときの給与所得額は156万円になりますから、



A法人 給与300万円
○法人税等:0万円
○均等割:7万円
○給与所得税等:(156−38)×15%≒17.7万円
合計 24.7万円


福田ゆみ:個人事業のときと比べて5万円以上減りました。5万円でも節税したければ法人ですね。

隅田:ところが、B法人で事業を行うものの、極端なシミュレーションですが給料を一切取らなければ、どうなるかと言いますと、


B法人 無給
○法人税等:300×23%=69万円
○均等割:7万円
○給与所得税等:0万円
合計 76万円


福田ゆみ:税金は76万円ですか!

隅田:そうなのです。つまり、給料の額を適切に決めなければ、真逆の結果になるおそれがあるということです。
これは、トータルの所得が300〜400万円付近の場合、“法人税等の税率”と、給与所得控除を加味した“実質的な給与所得税率”を比較すると、“法人税率”が圧倒的に高いためです。
しかし所得税率は超過累進税率ですから、“法人税率”と“実質的な給与所得税率”の高低関係は、所得が増えれば逆転します。


福田ゆみ:では、所得が1000万円では、どうなりますか?

隅田:事業所得が1000万円の場合はこうなります。


〇所得税等:(1000−65−38)×33%−636,000円≒232.4万円
〇事業税:(1000−290)×5%=35.5万円
合計 約267.9万円



次に、法人にして、仮に給料を600万円とる場合、給与所得額は426万円なので、


〇法人税等:400×23%=92万円
〇均等割:7万円
○給与所得税等:(426−38)×30%−427,500円≒73.6万円
合計 約172.6万円


なお、ここでは国民健康保険や社会保険は無視しています。

福田ゆみ:ここまで所得があれば明らかに、法人にした方が得なのですね。
でも現実は、好調な年もあれば、不調な年もあると思うのですが。


隅田:所得に波があって、不調な年もあれば、その不調を撤回するほどに好調な年もあるでしょう。
この点、個人でも法人でも、1年ごとに税金を計算するところは同じです。
そして、不調な年だけに着目すれば、個人事業である方が節税になるかもしれません。
しかし法人は、所得が800万円までに収まれば、税率はだいたい23%で一定です。
これに対して個人は、年ごとに超過累進税率で課税されますから、好調な年はいっそう多額の税金が計算されてしまいます。税額がとても多いという実感を覚えるのではないでしょうか。


福田ゆみ:長期的に見ても、法人がお得なのですね。よく分かりました。
皆さんも、このシミュレーションを法人設立の判断の参考にしてくださいね。


隅田:では今回の税務会計講座を終わります。

福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.法人を設立し給料をとれば、個人と法人とで所得を分担し、個人は給与所得控除を受けられる。
2.事業の所得が大きいほど、法人設立による節税メリットが大きい。
3.所得に波があると、実感として個人事業者は税額が多くなる。